ビノベーションレポート※1を活用した選手たちへのキャリアトレーニングという新たな取り組みを開始した星稜高等学校女子バレーボール部。女子バレーボール部の監督を20年勤めてきた村上先生に、教育で大切にされていること・「updraft」のキャリアトレーニングの効果について、本バレーボール部のキャリアトレーニング講師を担当している「updraft」事業責任者の鶴巻がお話を伺いました。
updraft キャリアトレーニングについて
スポーツキャリアトレーニング事業「updraft」(https://updraft-sports.jp/)において、早期に自主自律型人材を育成することを目指し、小学生〜大学生年代向けにキャリアトレーニングを実施。同校バレーボール部では、部活動を通じて、選手自身が自分で自分のことを深く理解し社会で活躍する人財になってほしい、そして「結果を出す」という過程を通じて、自分自身の強み・弱み・特性を理解し、自分自身で意思決定できる人生を歩んでほしいという願いをこめて、キャリアトレーニング、チームビルディングトレーニングを実施しています。
※1:行動変革を促進し、人と組織の力を引き出すことを目的に開発された心理アセスメント。スポーツ庁委託事業「アスリートキャリアコーディネーター育成プログラム」に採用された。updraft(TOiRO株式会社)と事業提携し、キャリアトレーニングツールとして今注目を集めている。(画像:ビノベーションレポート受検結果例)
Profile
星稜高等学校
石川県金沢市にある学校法人稲置学園が運営する私立中高一貫学校。
建学の精神“誠実にして社会に役立つ人間の育成”に基づき、学業・部活動の両面に力をいれている。全国大会常連校の野球部、サッカー部を筆頭に各部活華々しい成績を収め、松井秀喜選手や本田圭佑選手をはじめ、多くのトップアスリートを輩出。また、土曜特別授業の“GROW! SEIRYO PROGRAM”では、キャリア教育や国際理解を柱としたプログラムを取り入れるなど、時代の変化に伴う様々な教育課題に対しての新しい教育の形を模索し続けている。
星稜高等学校 女子バレーボール部 監督
村上 宜重 (写真右)
石川県立小松工業高校でバレーボールを始める。卒業後、日本体育大学男子バレーボール部へ進学。2000年より星稜高等学校の教諭として、女子バレーボール部の監督に就任。「日々感動・全員バレー」の部訓の下、見ている人に感動を与えられるバレーで日本一を目指し、21年間指導に携わっている。バレーボールの指導だけでなく、「人間教育」を指導の柱に置き、チームワークを重視した指導を行い、日本一早い高速コンビバレーを掲げ、生徒たちと共に日々を積み重ねている。また、自身のチームだけでなく、石川県を中心に地域活性・選手育成の観点を踏まえた大会の企画運営まで手がけている。現在も、バレーボール×教育の分野で、様々な取り組みを通して、全国に元気を届けたいと日々奮闘している。
大学時に埼玉県選抜としてフットサル選抜大会で全国制覇。人材教育コンサルティング会社に入社し、若年層教育に従事。その後、スポーツ人材に特化した大手人材会社に入社。採用戦略、社員研修を0から設計・実施。IPOに向けた採用プロジェクトを牽引。現在は、組織開発コンサルタントとして複数社の人事企画を手掛ける。また育成年代に特化したスポーツキャリアデザイン事業を展開している。キャリア支援実績は5,000名に上る。
本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます!まずは村上先生が選手たちを指導するうえで大切にされていること、高校生年代に必要な教育についてのお考えをお伺いできますでしょうか。
村上先生:自分自身を知ること、人の気持ちを理解することは根本的に必要なことだと思います。そして、これは僕個人としての意見ですが、今の自分をつくっているベースというのは高校生活にあると確信しています。もちろん、大学以降も色んな経験があり、学びもありましたが、今44歳の僕と高校を卒業したときの18歳の僕がビノベーションレポートを受けても、それぞれの資質は同じ数値が出ていたと思うんですよね。
その、高校生活の中でも一番大切なのは、“感動体験”だと思います。
感動を届けられるバレーをしよう、支えてくれている人たちのために
“日々感動”って言葉は、部の横断幕やTシャツにもはいっていますよね。
村上先生:そうですね。あれは20年前に保護者の方から試合の会場で選手たちをすぐに探せるように部旗を作って欲しいと言われ、自分の好きな“感動”って言葉を起点につくった言葉なんです。あっという間に終わってしまう高校生活の中でより多くの感動体験をつかむためには、一日一日を丁寧に積み重ねることが大事だと思い、“日々感動”という言葉にしました。
バレーや高校生活を通して思いやりや感謝の気持ちを育んでほしくて、今も選手たちには「多くの方々に感動を届けられるバレーをしよう」と伝えています。
“日々感動”というメッセージの他にも20年間毎月、選手たちに意識してほしいテーマ(月間目標)を設定していて、今月(2月)は「感謝」にしています。
例えば親への感謝について、「親に本当に感謝しているなら、親から“今日何があったの?”と聞かれたときにも面倒くさがったらだめだよ。そしたら君たちの成長も止まってしまう。感謝の気持ちは何か、といったら話すことだよ。」と選手たちにも伝えています。
自分が親になったから分かることでもあるんですけど、子どもが学校で何をやったか、親ってすごく聞きたいんですよね。いいことも悪いことも。
玉拾いだけをする1年間、そんな状況を変えたくて高校1年生向け大会を企画
先生は星稜高校の女子バレー部にとどまらず、他校を巻き込んだバレーボールリーグも立ち上げられたんですよね。どうしてアンダー16のリーグを立ち上げようと思ったんですか。
村上先生:バレーボール部の最初の1年間はほとんどの選手が補欠で、球拾いで終わってしまう古い体質が続いていて。この現状を10年ほど前からずっとどうにかしたいと思っていたんです。
自分のチームももちろん大事なんですけど、子どもたちにはバレーボールを通じて勝敗だけではなく、「今日はこれができた!」とか、もっといろんな経験や感動体験を積んでほしいと思い、はじめました。
リーグ戦を始めたことで、他校の監督さんたちから「『勉強するので部活動を辞めます』という選手がいなくなった」と言っていただけたことは嬉しかったですね。
選手と一緒に、自分も変わらないといけない。そう気づけたupdraftのキャリアトレーニング
先生が20年以上、教員・監督としてのキャリアを積みながらも常に新しい挑戦を続け、今も変わり続けようとするのはどういった想いからなのでしょうか。
村上先生:選手たちといい時間、幸せな時間を一緒に過ごしたいというのが一番強いですね。選手たちの成長スピードって本当に早くて、追いつくためには自分も成長する、変化することが必要だと考えています。自分はこうだからと決めつけてしまうと彼女たちといい時間を一緒に過ごせないのではないかなと思うんです。
今回、updraftのキャリアトレーニングを女子バレー部に導入しようと決めた理由についてお聞きできますか。
村上先生:これだけ時代が変化してきて子どもたちの質も変わっていくなかで、これまでの指導にこだわらずに自分の指導をアップデートする必要がある、今のままではいけないな、と漠然と思っていたんです。色んなアンテナを張ってアプローチしていたときに、縁あって紹介してもらったのが鶴巻さんでした。
僕はビノベーションレポートで資質として表現されているとおり、こう見えてあまり人のことを信用したり、心を開くのに時間がかかるほうなんです。今だから言えるんですが、ビノベーションレポートってツールの説明を初めて聞いたときに、いいツールだってことは分かったのですが、正直ちょっと理解できずちょっと斜めに見てしまう自分もいました。(笑)
でも、僕の拙い質問にも鶴巻さんはひとつひとつ丁寧に噛み砕いて話してくれて、どんなことを目指しているのか、僕がやりたいことに対してupdraftとして何を提供できるのか、教科書のように通り一遍の用意された言葉ではなく、思考を整理しながら鶴巻さん自身の言葉で伝えてくれた様子を見て、信頼できました。彼は自分の目指すことに対して、色んなことを取り入れ吸収して、変化を恐れずに進んでいくんだなって思いました。
お互いの違いを理解することで、自分を出せるようになった
そう思っていただけていたなんて、とてもありがたいです。ビノベーションレポートを軸としたトレーニングを初めて3ヶ月ですが、選手たちの変化はありますか。
村上先生:選手たちはもちろんですが、僕も変わったと思います。選手たちが保護者の方々や学校の先生方に「村上先生変わった!」と言っているらしいんです。(笑)
そうなんですね!具体的にはどんな点に変化を感じていただけていますか。
村上先生:選手も僕も、自分を出せるようになりましたね。ビノベーションレポートでお互いの資質の違いが見える化されて、お互いの理解が深まったこと、お互いの自己開示をチームとして受け入れ合う時間をもてたことが大きかったと思います。
個人的な変化としては、これまでも自分の言葉で選手たちに何かきっかけを与えられたらいいなと思い、メッセージを伝えるということはやっていたんですが、内容が変わったというか、選手たちにも、保護者の方々にも、もっと伝えたいという気持ちが強くなりました。
トレーニングのワークで、選手たちが僕に対して率直に思っていることを伝えてくれたのですが、言いづらかっただろうなと思うことも勇気を出して伝えてくれたことが嬉しかったです。思っていた以上に自分でも気づけていなかったことが多く、チームが変わるためには自分が変わらないといけないな、と改めて強く思いました。
チームの勝利につながる成果はありましたか。
村上先生:先週、1ヶ月ぶりに練習ゲームをしました。ビノベーションレポートを始めてからとても充実した練習ができていたので、大変楽しみでした。今まで出来ていなかったことが、出来るようになってきましたし、いいプレーもたくさんありました。
少しずつやってきたことがバレーボールの成果として発揮できた生徒たちの頑張りは素晴らしかったと思うけど、それよりもチーム全員が同じ目標に向かっていい顔をして取り組んだことやみんながひとつになっている姿(先生が大切にしたいチームワーク)を見られたことが本当に嬉しかったと伝えています。
星稜から、育成年代から社会人まで、ちゃんと成長できる環境を作っていきたい!
チーム一丸となって臨む次の公式戦が楽しみですね!最後に、先生の描く今後の展望について教えていただけますか。
村上先生:女子バレー部の監督として、まだまだ現役を続けていきたいです。日々成長し、着々と社会で活躍する基盤をつくっている彼女たちと一緒にいい時間を過ごすために、これからも勉強を続け、自分の視野を広げていきます。
そして、これは昔から変わらず言ってることですが、「大好きな星稜高校をもっと元気にしたい」。さらにこれからは、今回のupdraftとの新しい取り組みで得られたノウハウを一般生徒や他の部活動にも還元していきたいです。
また、4月からは社会人女子バレーのチームをつくる予定で今動いています。仕事や家事、育児を頑張っている女性たちが、生きがいをもちながらやりたいことを実現していける、そんな環境を提供していきたいと考えています。
今、鶴巻さんに指導していただいている高校生年代に関わらず、自分のことを知ったり、人から自分がどう思われているか、どんな風にうつっているかというのは永遠のテーマだと思うんです。それを知ったときに人として心が豊かになると僕は信じているので、社会人バレーチームのメンバーにもビノベーションレポートを受けてもらい、家庭内のコミュニケーションや日常の生活、新しい挑戦に活かしてもらいたいですね。
チームに参加してくれる女性たちが自分の世界を広げられるチームになれるよう、彼女たちと一緒に自分も学ばせてもらい、成長していきたいです。
4月からの本格始動が楽しみですね!これからもupdraftとして、先生の挑戦をサポートさせていただきます!本日はありがとうございました!
企画・編集/TOiRO 広報